もう食べられない

パズドラが好きです。食べ物のことはあまり書きません。

【本】キンコン西野はおもしろくない(西野亮廣『革命のファンファーレ 現代のお金と広告』)

いわゆるひとつの「キンコン西野」のビジネス本です。

 

キングコング西野亮廣氏と言えば、世間では嫌われ芸人として有名ですが、いったい彼の何をみんな嫌っているのだろうか。もし「お笑い芸人としておもしろくない」という批評であれば僕も納得できる。

 

テレビで西野さんを見ても正直全然おもしろくないんですよ…。

 

ゴッドタンの劇団ひとりVSキンコン西野シリーズも、おもしろいのはひとりさんの方だけ。西野さんはフリートークがおもしろくない。ただそれには理由があると思っています。そもそもお笑いのおもしろさのひとつに「意外性」がありますよね。人って話をしているなかで、前の文脈から無意識に未来を予想しているのだけど、トークのおもしろい人というのは瞬間的にその未来の「逆」や「斜め上」をいき、かつそのときの言葉の選択が優れているわけです。

 

西野さんはその能力はあまり高くない、と思う。つまり、「ふつうの返し」になってしまうのです。ただ、そんなのは本人も突然わかっているだろうから、作り込んで臨める単独ライブなんかはおそらくおもしろいのではないだろうか。

 

それはまあいいです。ではなぜ瞬間的に意外性を選択できないのかというと、それは西野さんがとてもロジカルな人だからです。一事が万事、論理的にものを考える人だから、瞬間で弾き出す答えは当然論理的=ふつうということです。ひな壇で勝負しないと宣言して話題になったのも自分の適性をロジカルに判断したからではないでしょうか。ひな壇なんてまさに「瞬間的な意外性」の戦場です。流れを無視したぶっ込みトークやガヤ発言、自分の世界に引き込む定番ネタなんかは西野さんが持ってないものですから。

 

あ、お笑いの話はもういいですかね。

 

そんな西野さんの書いたビジネス本が素晴らしい、という話です。お笑いで意外性を出せない男のビジネス本は…意外性の塊でした。

 

目次からいくつかの項目を抜粋しますね。

 

・他人と競った時点で負け。自分だけの競技を創れ。

・作品の販売を他人に委ねるな。それは作品の「育児放棄」だ。

・ニュースを出すな。ニュースになれ。自分の時間を使うな。他人の時間を使え。

 

 本当は目次全部載せたいくらい、いいタイトルばかりです。初見だと「え!?」と思う一文じゃないですかね? でも中身はすべてが論理的な思考に基づいた理論に終始して、しかも変なカタカナ語は一切なし。丁寧で小学生でも読めるような言葉遣いですが、読めば大人も納得させられる文章です。

 

慣例に縛られない、疑問を疑問のままにしない、自分の仕事に責任を持つ、他人と違う行動を恐れない、どれもそうできたらなあと誰もが漠然と思っているのではないでしょうか。この一冊を通して西野さんはそれは正しく必要なことだと滾々と説明し続けてくれます。そこには優しさしか無い。何が嫌われ芸人なの?って本当に思います。

 

あ、で、この本に説得力がある理由、書き忘れました。

 

この人、全部ゴリッゴリに実行してるんですよ。机上の空論じゃない。ものや企画を売るために考えたこと、全部実行している。地味な作業も毎日毎日ずーっとやってる。それをSNSやブログですべて発信している。いや、まあそれも作り物かもしれないですよ、そりゃ。僕は信じるってだけの話。この人は信じるに値すると僕は思いました。…と書いて思い出した。「お金を稼ぐな。信用を稼げ。「信用持ち」は現代の錬金術師だ」という項もございます。

 

西野さん、トークは面白くないけど考え方は信用してます。

 

いい本です。おすすめ。

 

革命のファンファーレ 現代のお金と広告

革命のファンファーレ 現代のお金と広告